発行所:聞光寺発行人:釋温成寺報

第111号 2020/10/1発行

第110号

なぜ人として生まれてきたのか?

コロナ禍で変わるこれからの生活

新型コロナの終わりが全く見えない不安の中で、生活の形がどんどん変えられてゆく私達の日常の変化を、どのように受け止めて生活すればいいのでしょう。

ウイルスに汚染されない事と、経済が滞らないで進めば良いのですが、上手くゆかないで右往左往している現状のようです。人間は初めてのことに何時でも戸惑って右往左往してしまいます。

秋から冬にかけて、新型コロナに加えインフルエンザも加わり、より多くの患者が増加する事と思います。新型コロナが流行する中、新しい生活様式が求められ、そこから生まれた秩序や道徳が生活の規範となってゆくのでしょう。

そういった生活様式の変化の中でも、変わるもの、変わらないもの、又生まれてくるもの、失われてゆくものが沢山あると思います。例えば友人と向かい合って飲食を共にし、注がれたり注いだりしながら、懐かしい話や未来への夢や希望を語り合う楽しさは無くしたくないものです。そんな些細な集まりが、人と人との繋がりを育て、新しい未来や生き方を生み出してきたような気がします。

また、人が沢山集まる集会や会合などでは、新しい仲間が生まれます。一人ひとりの力は小さいけれど、沢山集まれば新しい大きな力となってひろがってゆくことと思います。

今年に入り新型コロナウイルスの感染が広まってきてから、感染対策として、人が集まる集会や会合を三密(密閉・密集・密接)になるとし、自粛要請や県外あるいは市外への不要不急な行動を慎んでほしい等、私たちの行動が制限されてきました。

お寺は不特定多数の人が沢山集う場所ですが、ウイルスの感染を心配し、本山を筆頭に別院や末寺のほとんどが、年中行事や研修会を延期や中止にしました。どうしても開催しなくてはならない時は、会場の大きさを更に大きくし、少人数での開催としてきました。

このように新型コロナは私たちの生活に多大な影響を及ぼしています。最近の葬儀に関しても、手間のかからない簡略形式の葬儀へと変わりつつあります。それに伴い昔からの習慣や伝統が無くなってしまうのではないかと心配しております。

新型コロナの影響で、葬儀に関する集まりは人数を少なくしていますが、大切な人とのお別れには沢山の方々と、最後のお別れをさせてあげたいと思います。しかし、今は多くの人たちが、新型コロナの影響で葬儀の場に行けない日が続いております。お別れの中に、私の知らなかった亡き人の思いに触れるご縁を失っているのです。

一人の人のために、沢山のいのちが関わり合って、前に進んでいるいのちの尊さを忘れてしまうのではないかと気にかかります。何時になるか分かりませんが、普段会えない人たちが、葬儀や結婚式で、その一つのご縁によって集まる。これは、私たちが生きていることの不思議さを感じさせていただき、前に進む大きな原動力になっているのです。皆様と共に、早くそんな集まりが何時でも何処ででもできるように頑張りましょう。

日本人にとって、マスクをする習慣は、身近な感染予防対策としてあまり苦になりませんが、マスクはしないほうがスッキリします。今は新型コロナで、皆様も我慢してマスクをしているのでしょう。

しかし私たちは、人と話をする時には、顔の表情や体全体を見て話をしているのです。私たちも法要の時、お経の後でお話(法話)をするのですが、その時、目の前で参詣されていおられる方々の顔の表情や体の動きを見ながら話題を広げてお話をしています。

顔が見えることによって、言葉が前へ進んでゆきます。早くマスクをしないでよい生活を取り戻したいものです。その為には、新型コロナが流行している時はもちろんですが、収束しつつある時も、もう一呼吸する我慢が必要と思います。

報恩講(ほうおんこう) 当院 井上宗温

聞光寺では10月25日、26日に報恩講が勤まります。

報恩講とはそもそも、浄土真宗の宗祖親鸞聖人の祥月命日、11月28日に合わせて行われる法会の事を言います。私たちに大切な教えを伝えて下さった宗祖の恩に報いるという事をご縁とし、私たちが日頃どのような恩を受けて生きているのかを見つめ考える大切な機会としています。

京都の本山では11月の21日から28日まで行われ、宗祖の忌日に正に合わせて行うという事で御正忌(ごしょうき)報恩講と言います。それに対して、聞光寺を含む他の末寺では、本山の報恩講に皆が参詣できるように、それとはずらして行います。これを、本来の忌日から取り越し、引き上げて行うので「お取り越し(おとりこし)」と言ったり「お引き上げ(おひきあげ)」と言ったりします。

そして、お寺だけではなくそれぞれの家庭でもお内仏で1年に1度は報恩講、お取り越しのお参りをします。

それが、「御回壇(ごかいだん)」といって皆さんのお宅を回っているお参りです。地域によって回っていないお宅もありますが、本当は年に一度は回れたらと思います。

真宗では、一年は報恩講に始まり報恩講に終わるとも言われています。まずは、10月25日か26日の聞光寺の報恩講にお参りして、生活を見つめてみてください。多くの方のお参りをお待ちしております。