第119号 2022/10/1発行
普共諸衆生 往生安樂国
みんなちがって みんないい
夏が終わり秋が深まって、おいしい果物等が目に付くようになりましたけれど、台風の季節でもあり、その被害が心配です。近年は、温暖化の影響もあるのか台風が起因する被害が多いように思います。荒れる前から身の安全を優先して、気を付けて事前の準備をしておく事が大切でしょう。
より良い生活を求め、自然と戦ってきた結果が、災害という言葉になってしまうのでしょうか。世界中で同じようなことがたくさん起きていますが、日本のように早く回復できないむずかしい場所が沢山あり、それが原因で命を落としたり、今までの生活を変更しなければならない人たちもたくさんいます。
今、わたしは、安全なところにいるから大丈夫とはっきり言えない地球に住んでいるのです。かたちあるものは、いつか必ずこわれてゆきます。そしてそれは、誰もが違う個性を持っているのだから、何時・何処で・どのようにおきてくるかわかりません。でも必ずその時が来るのです。
だから生きているものは、何時でもいのちの最後は心休まる場所で過ごしたいと願うものです。その為には、日頃歩む方向は、安心して穏やかに過ごせる方向に向かおうとしています。
しかし、私たちの考える幸せは、自分の願いが叶う、自分の思い通りになるというような、自分が幸せになればすべてがうまくゆくような幸せを思って前に向かっていませんか。私たち人間は、自分を中心にして考えてしまう生き物で、それが煩悩具足の凡夫と言われるゆえんです。
そのことを親鸞聖人は、「一年多年文意」の中で、
「凡夫というは、無明煩悩われらが みにみちて、欲もおおく、いかり、はらだち、そねみ、ねたむこころおおく、ひまなくして臨終の一念にいたるまでとどまらず、きえず、たえず」
と善導大師が教えて下さったといわれております。私たちの煩悩は、死ぬまでなくならないということです。
こんな煩悩具足の凡夫の私が、どんな修行をしたら煩悩をなくすことができるのでしょうか。煩悩を無くすのではなく、今どのような煩悩が、私の中で動いているのか、私を誘っているのかに気付ける私を育てることが大切なのではないだろうか。
いのちの願いは、時代が変わろうが、場所が違っても誰もがみんな仲良く明るくともにいきたいと願って生きているのではないですか。
その方向をその場所を、お釈迦様は「浄土」と呼び、「浄土」の方向に向かうように押し出してくださる教えを下さったのではないですか。
仏様は、向かってきたものはみんな救い取ってくださると、私たちを呼ばれているのではないでしょうか。
私たちは、ただ信じて浄土を目指して歩くだけでいいのです。その時々で変わるような幸せを欲しがっているのであるならば、共にといえる生き方はできないことになります。なぜならば、私たちは一人として同じ人はいないからです。同じくないからこそ、自身で経験・体験しないことでも楽しく感じさせてもらい、共に喜ぶことができるのではないでしょうか。
みんなちがってみんないいんです。
大正末期から昭和初期に活躍された山口県生まれの童謡詩人「金子みすゞ」さんは、『私と小鳥と鈴と』という詩の中で、
わたしが両手をひろげても、
お空はちっともとべないが、
とべる小鳥はわたしのように、
地面をはやくは走れない。
わたしがからだをゆすっても、
きれいな音はでないけど、
あの鳴るすずはわたしのやうに
たくさんなうたは知らないよ。
鈴と、小鳥と、それからわたし、
みんなちがって、みんないい。
と詩っておられます。
私たちは、人と違うことを恥ずかしがったり、隠そうとしていることがよくあります。
お釈迦様の逸話で、生まれてすぐに歩かれ、天と地を指さして、「天上天下唯我独尊」といわれたとあります。何処にいても私はわたし、あなたはあなたであり、誰とも代わることのできない存在なのです。だから、それぞれ一人一人が尊く尊敬される存在であり、尊敬する存在なのです。
親鸞聖人の時代
当院 井上宗温
今年の大河ドラマは「鎌倉殿の13人」といって、平安時代末期から鎌倉時代初期の、鎌倉幕府が出来ていく中、主人公の北条義時(小栗旬)を中心にして、北条家が幕府の実権を握って行く権力闘争の様が描かれでいます。
ドラマですので、作られている部分は多々あるとは思いますが、今の私たちとは異なる、生と死が本当に隣り合わせにあるこの時代の人の生き様というものが伝わってきます。
そして、この時代は正に宗祖親鸞聖人が生きられていた時代です。
朝廷の場面で幾度も後鳥羽上皇(尾上松也)とその取り巻きとして慈円和尚(山寺宏一)が出てきます。この慈円は天台座主(天台宗のトップ)である優れた僧侶であり、親鸞聖人の出家得度を執り行った人物でもあります。
そんな慈円が権力にこびへつらう煩悩にまみれた僧侶として表されているのは、山寺さんの名演技と相まってとても印象深いものとなっています。
また、後鳥羽上皇と言えば、承元の法難で法然上人や親鸞聖人たちを流罪に処した張本人です。それが行われるのは今テレビでやっているところの1年程先の事ですので、正にこの時、京の都の中では法然上人の念仏の教えが広まっているところだという事です。
親鸞聖人は越後での流罪が解かれた後、関東に向かわれています。それは鎌倉へと政治の中心が移っていく中で、その周りに集まる多くの悩み苦しむ人々に念仏の教えを伝えていく為だったのではないかと思います。
ドラマを見て楽しみながら、その時代背景へと思いを馳せるのもいいのかもしれません。
お知らせ
来年、宗祖親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年の慶讃法要が、御本山京都東本願寺で厳修されます。コロナ禍が続き、長旅を遠慮されていた方々の久し振りの遠出を、本山参りにされたらいかがですか。
下記の日程で2泊3日ですが、楽々とした旅になると思います。
期日 令和5年4月24日(月)〜26日(水)
1泊目 琵琶湖グランドホテル
2泊目 長良川温泉 十八楼
旅行代金 6万2千円
行程の途中では、教か所の観光地に寄って行きますので、楽しみにしてください。
締め切りは人数把握のため10月末日とさせていただきます。たくさんの方と行ければ楽しいお参りになるでしょう。
秋に予定しておりました聞光寺・井上氏を訪ねる北信濃への同朋会旅行は、新型コロナ感染がまだ収まっていないということで、来年の春まで延期となりました。多くの人たちと早く旅をしたいものです。