発行所:聞光寺発行人:釋温成寺報

第113号 2021/4/1発行

第112号

流転輪廻のわれら

みんなちがって みんないい

桜前線が北上し、春真っ盛りの今、思い出します。学生の時、寮の一室から庭を眺めていた友が、そこに咲いていたフキノトウを見て、「春だなあ」といえば、もう一人は、「おいしそうだなあ」といったのです。二人を見ると、喜んだ明るい顔で言っているのです。

二人は庭に咲くフキノトウに、一人は春の温かさと命の輝きを感じ、もう一人は、春になると冬を乗り越えて生まれてきた大地の恵みと香りを感じた感動が、言葉として出てきたのでしょう。

大正から昭和初期に活躍された、山口県生まれの童謡詩人『金子みすゞ』さんがおられます。彼女の詩の中に、次の詩があります。

 

      私と小鳥と鈴と

 

  私が両手をひろげても、
  お空はちっとも飛べないが、
  飛べる小鳥は私のように、
  地面を速く走れない。
  私がからだをゆすっても、
  きれいな音は出ないけれど、
  あの鳴る鈴は私のように、
  たくさんな唄は知らないよ。
  鈴と、小鳥と、それから私、
  みんなちがって、みんないい。

 

という私たちが忘れてしまっているものを知らせてくれるものです。

また桜の時期は短いけれど、桜を見ることによって、厳しい冬を超えた喜びや、これから進んでゆくための希望をもらうのでしょう。出会うことが一緒でも、感じる心はみな違うのです。私たちは、まったく一緒の人は一人もいないのですから、それぞれが今のところで自分として自信をもって歩き続けることが大切なのでしょう。

また、「一切衆生悉有仏性」(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)という言葉があります。命あるものはすべて仏の心を持っているということです。しっかりと真向かいに向き合えば話が通じることを言っている言葉だと思います。

しかし、仏性によって自身が動き出せるのは、生まれも育ちも、あらゆる事が違っていることを認めた所から始まるのでしょう。

有縁廟(うえんびょう)が完成

計画しだしたのは、中越沖地震以前のことでした。本堂のことがあったので、遅くなりましたが、やっと出来上がりました。昨年の7月に完成する予定でしたが、昨年のコロナウイルスの流行によって、工事の進行が遅れてしまい、今になってしまいました。

遅くなったおかげで、合同墓建設委員の皆さまには、寺では気付きにくいことや、考えもしなかった視点を教えられました。委員の皆さまと、ゆっくりとご門徒さんのことをじっくり考えることができました事は委員の皆様に感謝するばかりです。

3月28日に、建設委員の皆さまと共に開眼法要を厳修し、4月から使用予約を始めたいと思っていますが、使用は4月中旬頃からになると思います。使用を予定されておられる方は、もう少しお待たせすることになりますが、ご容赦ください。分からないことがあれば聞光寺にご相談ください。

有縁廟(うえんびょう)